『月が満ちるその夜は』PLUS
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香山リカは聖テレジア学院に通う小学三年生の女の子。
オルゴール作家のお父さんは最近また旅に出てしまいましたが、優しいおばあちゃんやお母さんと一緒に暮らすごく普通の女の子です。
でも、そんなリカにもたったひとつだけ秘密がありました。それは……
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「……本当に、このお人形がリカを助けてくれたんだよね?」
リカは目の前にいる着せ替えサイズのお人形に向かってそう言いました。
お人形の名前はドールリカ。そう。リカと同じ名前のお人形です。きらびやかな飾緒の付いた凛々しい衣裳と腰の大きなリボンがチャームポイントのこのお人形、実は……ドールランドの王女様でもあるリカを護るお人形の騎士、ドールナイトなのです。
「……リカがこのコーリングリングで名前を呼ぶと、いつも助けてくれたお姉さん……それが、本当にこのお人形なの、よね?」
リカはしげしげとドールリカと自分の左腕にはまっているコーリングリングを眺めました。大好きなおばあちゃんから貰った大切なお守り、コーリングリングの力をリカが知ったのはつい最近のことでしたが、今では名実ともにリカの大切な宝物になっていました。
つん……
リカはドールリカの頬っぺたに触ってみました。ちょっと硬い手触り。それにひんやりと冷たい感じです。
「……お姉さんは、こんなに冷たくて硬くなかったのに。やっぱり夢だったのかな?」
リカは今までドールリカに助けてもらったことを思い出してみました。ピンチのたびに颯爽と現れて、リカを助けてくれるお姉さん。綺麗で、格好良くて、強くて、優しくて……
「……あれ?や、やだ……リカ、どうして?」
ドールリカのことを考えているうちにだんだんと顔が赤くなってくるのに気づいたリカは、慌てて手をパタパタと振って自分の中の考えを打ち消しました。
でも……
顔を紅く上気させたまま、リカはそっとドールリカに手を伸ばしました。
さわ……
布の独特の手触りがしました。人形のドールリカの体は硬く、温もりも感じられません。にっこりと笑う表情にも生気がなく、髪の毛も作られた感じがしました。
さわさわ……
髪の毛から顔、そして胸元から腰へとリカの手は動いていきます。硬い手触りの冷たい人形の体に、徐々にリカの温もりが伝わっていくようでした。
ひとしきりドールリカの体をまさぐった後、ドールリカを手にしたまま、リカはドールリカを呼びました。その声に応じて、今まで人形だったドールリカの瞳に光が宿り、人形のように(当たり前のことですが)硬かった体も生きている証と温もりを帯びます。
「……お呼びですか?リカ様……っと、こ、これは!?」
呼び出されたドールリカが自分をつかんで離さないリカの目を見て驚きの声を上げました。
無理もありません。自分の体をしっかりとつかんだリカの両手がドールリカの体のいろいろなところをまさぐってくすぐったいだけでなく、リカの雰囲気もなんとなくいつもと違うような感じです。
「……そのままでいてね。ドールリカ」
「リ、リカ様?目の色が違っておりま……」
さわ……
ドールリカがきゅっと唇を噛み締めました。リカの指が腰をなぞったからですが、その反応はかえってリカを面白がらせただけのようでした。
「どんな気持ち?ドールリカ?」
いけない遊びだと判っているのでしょう。リカが上気した顔に小悪魔のような笑みを浮かべてドールリカに聞きました。
「ど、どうと聞かれましても……」
ドールリカはそう答えるのが精一杯でした。ちょっとでも気を緩めると声が出てしまいそうなのです。それでもリカの手は休まることはありませんでした。
さわ……
「ねぇ、今どんな気持ち?ドールリカ?」
服の上からまさぐられているだけなのですが、そのつたない手つきがドールリカにはくすぐったくもあり、また違う感覚でもありました。
「……リカ様?もしや、デヴォールの……っと、そ、そこは……お止めください!」
ドールリカは自分の呼吸がだんだんと荒くなるのが判りました。そのとき、リカの手がだんだん足元に伸びているのに気づいたドールリカが何とかそれを押し留めようとしましたが……
「どうして?ちゃんと口にしてくれないとリカ、どうしていいのか分からないよ?」
部屋の空気がまるでお砂糖を溶かしたようです。ドールリカはリカの指先を通じて、リカの鼓動が聞こえてくるのを感じました。口ではそう言っているものの、リカも緊張しているようです。
リカの手が腰のリボンにかかりました。
「……リカ様っ!?」
ドールリカが恥ずかしそうに顔を赤らめましたが、リカの耳には届きません。しゅるっと衣擦れの音を残して大きなリボンが床に落ちました。
「…………!!」
リカの手がパンツのボタンを外し、その隙間にリカの細い指が入り込んできたとき……ドールリカが声にならない声を上げました。
「……ドールリカ、ちゃんと女の子してるんだ……」
ドールリカの体をまさぐりながらなんとも言えない感覚に顔を紅潮させたままのリカでしたが、ドールリカの絹の下着に包まれたその場所を指で探り当てたとき、驚きと期待がない交ぜになった言葉が口を衝いて出ました。
リカの指の動きが速まります。その動きにドールリカが素直に反応することそのものがリカには驚きの連続です。
「……いいにおい……これ、ドールリカのにおいなんだね」
「……リカ……様……そんな……」
リカがドールリカの耳に顔を近づけてそっと息を吹きかけます。その瞬間、ドールリカの体が跳ね上がるかのような勢いで一度大きく震えたかと思うとぐったりと動かなくなりました。ドールリカの体は小刻みに震え、汗でびっしょりになったその顔は、リカが今まで見たことがないほど綺麗な……それは怖いほどに綺麗な顔でした。
ドールリカの体から抜いたリカの指先は白くねっとりと濡れ光っていました。ドールリカのにおいがするその液体をリカは恐る恐る嘗めてみました。
「……リカ……様?」
上気した、夢見ごこちの表情のまま、ドールリカがその様子を見ていました。
「……ドールリカの味がする……」
リカがいとおしそうに自分の指先を見つめる中、ドールリカは人間サイズに体を変えました。
「……ドール……リカ……?」
リカがその様子に気づいたとき、ドールリカはリカの細いあごをその白い指で持ち上げ、そして……
「……んっ!?」
初めての経験でした。ドールリカの舌がリカの整った歯列を割り入り、歯の裏を舌でくすぐったかと思うと、不意に舌を絡めてきました。
ドールリカの激しいキスに、リカは喘ぐしかありませんでした。
激しいキスをしながら、ドールリカの手はリカの歳相応なまだ膨らんでいない胸をまさぐり、初めての経験の中で不器用に自己主張をはじめた蕾を指先でやさしくこねまわし、膝をリカの股の付け根に押し当てながら徐々にリカをベッドに誘導していきました。
ドールリカとリカの唇を繋ぐきらきらと輝くものが、ゆっくりと、未練を残しながら切れたとき、リカはもう立っていることができないほどでした。
「……さあ、リカ様……夜はまだまだですよ……ふふふっ……」
ドールリカの瞳に妖しい輝きが宿っていました。にっこりと笑ったまま近づいてくるドールリカの様子は、ちょうどさっきまでと立場が逆になっただけだったのですが、リカはさっきのキスの余韻に喘ぐだけで精一杯でした……
ドールリカの手がリカの胸元から腰、そして腿へと伸ばしたあと、突然少女らしいパジャマのズボンの中に手を入れました。
「……ひゃっ??」
「……怖がらないで下さいませ。リカ様。ご気分はいかがですか?」
ドールリカがリカの耳元でさっき自分がされた質問をそのまま囁きました。
「……リカの体の中が……熱くて……怖い……」
ドールリカがくすりと微笑みました。もう一度リカにキスをしたドールリカはズボンの中に入れたままの手でリカの足を開かせ、まだリカ以外の誰も手を触れたことのないその部分にそっと触れました。
「……リカ様のここは……」
リカの顔が羞恥で赤く染まりました。歳相応、といえるのですが、まだリカは蜜をたたえ始めたばかりでほころび始めたばかり、という状態です。それでも、今まで経験したことのない感覚の連続にリカは戸惑うばかりでした。
「……お気持ちを楽に……誰もが通る道です。御前様も、織江様も……こうやって……」
ドールリカの指先にちょっとだけ力が入ります。その瞬間、リカが顔をしかめました。
「……痛い……痛いよ、ドールリカ」
その声を聞いたドールリカの手が止まりました。ズボンから手を引き抜き、うっすらと浮かんだ涙の雫に、ドールリカがそっと口づけます。
「……失礼いたします」
そう言うが早いか。ドールリカはリカのパジャマの上着を捲り上げ、リカの日焼けしていない白いお腹から膨らんでいない胸までがあらわにされます。
「……ドール……あっ」
リカの声は今しがたまで自分自身をまさぐっていた残滓がついたままのドールリカの手と唇でさえぎられました。片方の桜色の蕾に暖かいぬめりを帯びた指先が伸び、それと同時に暖かい息がもう片方にかかったとき、リカは今まで発したこともない声を上げていました。
「……リカ様……」
興奮して上気したままのドールリカが空いた手で上着を脱ぎ、リカに負けないくらい白く透き通った肌をリカの前にさらします。
「……ドールリカ……」
もはや焦点の定まらなくなったリカが、目の前に差し出されたドールリカの白いふくらみに口づけます。それは……お母さんとはまた違った感触でした……
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「……リカ様……」
ドールリカが横で健やかな寝息を立てているリカに、まだ余韻の覚めやらぬ視線を向けました。
「……わたくしはドールナイト。遠き昔よりコーリングリングを持つお方に仕えること、そして……今はドールランドの王位継承者であらせられるリカ様をお守りするのがその使命……」
そこまで言ったとき、ドールリカは一旦言葉を切りました。
「御身危険のとき、お呼びいただきますれば即見参いたします」
その言葉を残してドールリカはリカのベッドから離れようとしました……
……が、それはドールリカの手を握ったままのリカが許しませんでした。
ドールリカはくすりと微笑んだあと、自分の手を握ったままのリカの手にそっとキスしました。
「……ご安心下さい。リカ様。わたくしは、あなたとともに……いつまでも……」
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