失われた知識のルビー
序章
ここ数年、世界は不穏な空気で満たされていた。それまで穏やかだった海も日をます毎に荒れ狂い、爽やかにそよいでいた風も何かに怯えたようにその流れを止めた。
そんな中で起こったのが、一月前の大地震とその影響かどうかは知らないが三日前にここら辺一体を襲った大津波だった。俺達が世話になっているリフレクト村も大きな被害を被り、東の海のど真ん中に祭られていた海神の神殿も吸いこまれるように沈んで行った。
…しかし、それだけならまだましだった。海神の神殿が東の海に沈んだお陰で封じられていた海魔と呼ぱれる魔物が数百年の眠りから醒め、この村の人間を一人また一人と石に変えて行ったんだ。俺達の保護者でこの村の長老でもあるアルヘイブさんも、ただ天を仰いで祈るだけだった。
…そうこうしているうちに海魔は村人たちを石に変えただけに飽き足らず、とうとう村に貢ぎ物を差し出せと要求して来たんだ。
しかもその内容が全く気にいらない。『毎月、満月の夜にあの神殿が沈んだ後にできた洞窟の入り口に、処女十人と葡萄酒を満たした桶を二十持って来い』だと。おとぎ話の悪い鬼か!と叫んだねえ、俺達。
村で緊急に開かれた合議会でもろくな案が出る訳がなく、とうとう素直に貢ぎ物を差し出すことで決者がついたんだ。だけど、それが村人全員に発表されたとき、俺達は声を大にして反対したんだ。
当然、俺達は曲がったことが大嫌い(何?信用できない?…勘弁してくれよ)だし、何と言っても許せなかったのは、その貢ぎ物の中にアルヘイプさんに拾われて以来今までずっと俺達の良き姉貴だったアルヘイプさんの一人娘のブリュンヒルデ義姉さんが含まれていたことだった。
これが一番頭に来た。
そこで俺は幼いときからずっと一絡に幕らしていたレルムとロスヴァイゼとアレクゲルグの三人を無理やり引き込んで洞窟に乗り込み海魔をやっつける計画を立てたんだ。
…俺?俺はテュロスさ。村では『世界一頼りになる男』なんて二つ名で呼ぱれている正真証明の二枚目。(周りから一斉に反論の声と一緒に様々なものが飛んで来る)…わわっ!か…勘弁してくれよ。ねっ?…だめ?そんなあ…
…コホン。え一っと、お調子者テュロスが急に体の調子が悪いと言い出してこの場を逃げるように去って行ってしまったため、あたしこと口スヴァイゼが続きをお話し致します。
…大体のあらすじはテュロスのお話しのとおりです。ただ、本編ではお義父様から私達に話が持ち込まれた辺りをもう少し詳しくお話し致しますので、煩わしいとお思いでしょうがしばらくお付き合い下さいませ。
…さて、あたし達がこれからあのお調子者に一体どういったいきさつで冒険の旅へと連れ出されるのか?果たしてあたし達であの人間を石に変えるという恐るべき力を秘める海魔を倒すことができるのか?その続きはまた本縄で…。
…P.S.〜っ!あたしへの応援もよろしくお願いしま〜すっ!